【パティスリーユウタオグラ】ストイックなまでに研ぎ澄まされた感性と緻密な技が融合したフィナンシェ
パティスリーユウタオグラ(東京都調布市)
日本料理を学びパティシエに転身、培われたパティシエの矜持。
2023年6月オープンのPâtisserie YUTA ogura vision Y(パティスリー ユウタオグラ ビジョン ワイ)は京王線つつじヶ丘駅徒1分の好立地な通りに面しており黒を基調とした外観はまるでパリ市内の一角にあるパティスリーかのごとくスタイリッシュな趣向が感じられます。

同店オーナーシェフの小倉 優太シェフはもともとは日本料理を志しておった稀有な経歴の持ち主です。しかしその後自身の食物アレルギーがきっかけでパティシエの道に転向しました。
そんな小倉シェフは『当時日本料理の基礎を学んだ経験がその後パティシエとしてのみならず一人の料理人としての自らの菓子に対する考え方の幅が拡がり料理としての視点で見ることが出来るのは大きな強みです。』とのことです。
パティシェに転向した小倉シェフは当時16歳から日本のパティスリーサダハルアオキで修業をはじめ、翌年17歳の頃にパティスリーノリエットの永井シェフとの出会いにより永井シェフからパティシエとしての矜持を教わり、技術のみならず精神面でも多くのことを学び得たとのことです。
それは独立を果たし一国一城の主となった今でも尚、小倉シェフにとって永井シェフの存在は自身の大きな精神的支柱であり同氏の指導を大切にしておるとのことです。
弱冠18歳、満を持していざフランスへ!
もともと独立志向が強かった小倉シェフは高校卒業後18歳で自らの強い意志で単身渡仏します。
当初行くあてもないなかの渡仏であり、自らの足で見つけたパリのレストランからフランス修行がスタートし、その後、縁あって当時日本人でパリに出店したことで大きな話題となったパティスリーサダハルアオキパリの青木シェフのもと本場パリでフランス菓子作りの研鑽を積みました。
20歳の頃、ビザの関係で一時帰国を伝えた永井シェフから『パリだけではなく地方も見た方がフランス人の生活がわかる』と貴重なアドバイスを受け、決意を新たに再び渡仏し今度は南仏に移住し、パリとはまた全く異なるフランスの地方の生活様式のなかから育まれた伝統的な菓子作りを学びました。
南仏では単に菓子作りだけでなく、地方独特の慣習として原料農家の方々とのWinWinの関係作りによる地域共生の大切さを身をもって体験したそうです。
煌びやかで時代と共に進化するパリの最先端な菓子と地方の地場産品で作られた長年にわたり変わらず親しまれる伝統菓子、それぞれの良さを学んだことこそが小倉シェフにとっての創作の原点ともいえます。
フィナンシェの主役は3種のアーモンド!
小倉シェフ曰くフィナンシェとは「アーモンドが主役でバターが脇役の凝縮感のあるお菓子」とのことです。そのため特に主役のアーモンドにはこだわりが強く同店ではひとつのフィナンシェに3種のアーモンドを使用しております。
一つ目はイタリア産のパルマギルジェンティ種、二つ目はスペイン産のバレンシア種、そして三つ目はアメリカ産アーモンドとそれぞれ「油分の多いアーモンド」、「香気成分の多いアーモンド」、「旨味の多いアーモンド」と3種の個性を最大限引き出すよう見極め全て自社ブレンドにて使用しております。
またその上で更なるこだわりとして、かつて渡仏時に現地では当たり前であった習慣からの学びとして同店で使用するアーモンドは粉(プードル)として仕入れるのではなく、あえてそれぞれ3種共に皮付きのホールで仕入れ、毎朝その日に使用する分のみ自ら挽き使用しております。

自らアーモンドを挽くといったひと手間により挽き加減を調整しアーモンド本来の豊かな香りをより一層活かすことに徹底してこだわっております。
また、主役を支える名脇役としてのバターはアーモンドをより引き立てる役割として、「存在感はあるが主張しすぎない」「ミルク感が強く野性味がある」ニュージーランド産のバターを使用しております。そしてそのバターをきれいな「きつね色」に加熱し焦がしバターとすることで生地全体の最適な油分と水分のバランスを保つよう、最後は「秒単位」の加熱時間の見極めで手早く熟練の技で仕上げております。
料理とは、理(ことわり)を料(はか)ること
日本料理の学びの経験を持つ小倉シェフの料理に対する考え方として同氏曰く『料理とは理(ことわり)を料(はか)ることなんです』と。
理とは理由であり、物事の本質や筋道を洞察し見極め全てを理由にもとづき論理性と感性により考えて行動することです。つまりは菓子を料理するにあたり、素材について「なぜその素材なのか?」製法について「なぜその製法なのか?」をひとつひとつの理由を持って行動し、そのためにはまずはその料理の成り立ち、歴史的な背景、ストーリー(物語)をきちんと理解することが大変重要とのことです。

フィナンシェとはそもそもフランス語で「金融家」「お金持ち」の意味があり、その背景は諸説あれどかつてパリの金融街で働く忙しい方々に手軽に親しまれ、またその形も金融街にふさわしい金塊をイメージしたいわば「金融的なリッチ」なお菓子が成り立ちのようです。
小倉シェフは、まずはそういった背景をしっかり理解し、そこからフィナンシェ作りの「理(ことわり)」を考え独自の発想が生みだし、ストーリーに沿った原料や製法を導き出しております。
小倉シェフの菓子作りの基本はそういったひとつひとつの考え方の積み重ねであり、それは道具に対しても同じです。
例えばフィナンシェ作りに欠かせないフィナンシェ型は、自身の柔らか目で水分が多くグルテンが少ない生地との相性を最大限考慮し、その生地の焼き入れ時の熱伝導性やその際の水分の飛び方など精緻な加減を吟味し「千代田金属製」のブリキの金属型にこだわって愛用しております。
「おたく気質」を自認する小倉シェフにとって「本気の職人のきめ細やかな努力の先に真の美味しさが待っている」とのことです。
❝オグライズム❞のその真の強みとは?
日頃よりストイックなまでに完璧な菓子作りをめざす小倉シェフの強みとは「柔軟性と行動力」にあると感じます。
そのポイントは3つあり、1つ目は「コラボしていく力」。菓子作りを菓子の世界にのみ留まることなく更に広いマーケットとコラボし新たな価値を生み出すことを実践しております。例えばフィットネスジムとのコラボや障がい者施設や病院との協業など幅広いネットワークのなか活動しております。
そして2つ目は「関係する方々とのWinWinを構築する力」です。
例えば原料を仕入れる農家とはフェアートレードを前提とし、けして価格を抑えて仕入れるのではく双方にとって適正な価格で原料を仕入れ、そこから更に自身の工夫によりどうすればお手頃な価格でお客さまにご提供できるかを考えておるとのことです
この考え方の実践によりシェフ自身は農家とのWinWinな関係で、常に良い原料を仕入れることが出来る好循環が生まれるとのことです。また、農家のみに限らず日々の業務として顔を合わす機会の多い原料問屋や機械メーカとの接点も小倉シェフのとっては貴重な情報収集の機会であり常にアンテナをはっておるとのことです。
そして最後3つ目は「常にレシピや環境を見直す変化対応力」です。
様々な最新情報を活かすべく常にレシピが進化を遂げており新しい原料や新しい技法は良いと考えれば積極的に取り入れおるとのことです。
また新店においては時代の変化対応として従業員が「働きやすい」環境にも注力しており、機械導入による省力化・時間短縮はもとより「高い所に置かない」や「重い機材は使わない」など、女性が多い職場だからこそ最高のパフォーマンスを発揮できる環境作りとしてきめ細やかな従業員への配慮も強みと言えます。
小倉シェフの夢、そして信念
小倉シェフにとっての将来の夢とは、「フランス菓子がもっともっと身近になるよう業界の発展に貢献したい。その為には今後、まだまだ発展中ではあるが自身の『オグライズム』を受け継ぐ職人の育成にも注力しそういった同志による店舗展開を増やしていきたい」とのことです。
最後に小倉シェフの座右の銘はフランスの詩人より『愛の無い人生なんて本当に生きたといえない』と。
自身の人生観において今まで多くの方々に支えられてきた想いのなか『愛』こそが大切なこととして、関わる方々全ての人とのWinWinな関係で愛せることが本質的な人生のテーマであるとのことです。


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3,680円(税込み)